2017年5月24日水曜日

<短期前払費用について>

「前払費用」とは、法人が一定の契約により継続的に役務(サービス)の提供を受けるために支出した費用のうち、その事業年度終了の日においてまだ提供を受けていない役務(サービス)に対応するものをいいます。原則としてその事業年度の損金にはなりません。
ただし、地代、家賃、賃借料、リース料、保険料などといった前払費用のうち、その支払った日から1年以内に提供を受ける役務に係るものは「短期前払費用」として、その支払時点で全額を損金に算入することが認められます。

短期前払費用は一定の節税対策としても有効ですが、適用条件を満たさないと認められませんのでご注意ください。



■短期前払費用4つの要件
短期前払費用とは、以下の4つの要件のすべてを満たす必要があります。

1.
一定の契約に従って継続的に提供を受けること。すなわち、等質等量のサービスがその契約期間中、継続的に提供されること
2.
役務の提供の対価であること
3.
翌期以降において時の経過に応じて費用化されるものであること
4.
現実にその対価として支払ったものであること

さらに、継続して適用する必要があり、「利益が出た期だけ1年分を前払いする」という処理は認められません。また、資金が役務提供に先立って流出するため、費用が固定化する恐れがあるところは注意です。

■重要性の乏しい費用についての特例的措置
短期前払費用はあくまでも特例的措置です。重要性の乏しい費用について、企業会計上の簡便な処理を税法上でも認めるという趣旨にのっとっています。したがって、原価的要素となるものや、人件費など重要な営業費用となるものは、短期前払費用の特例は適用できません。

一方、費用に重要性があるかどうかは、明確な基準がありません。その前払費用の金額、法人の財務内容に占める割合や影響などを総合的に勘案して判断します。


■事例に学ぶ該当の可否
では、例を挙げて以下の費用が短期前払費用に該当するかどうか考えてみましょう。すべて3月決算法人が前提条件です。

事例1)期間10年の建物賃借に係る家賃(4月から翌年3月までの1年分)を毎年3月末に支払う
→○:賃貸借契約に基づいて継続的に提供を受けているため。支払い時に全額損金算入できます。

事例2)期間10年の建物賃借に係る家賃(4月から翌年3月までの1年分)を毎年2月末に支払う
→×:翌年3月分の家賃については、2月末の支払日から1年を超えているため。

事例3)雑誌の年間購読料(4月から翌年3月までの1年分)を毎年3月末に支払う
→×:物品の購入であって、役務提供に該当しないため。

事例4)雑誌の年間広告掲載料(4月から翌年3月までの1年分)を毎年3月末に支払う
→×:時の経過に応じて費用化されないため。

事例5)弁護士への年間顧問料(4月から翌年3月までの1年分)を毎年3月末に支払う
→×:等質等量のサービスでないため。

■小切手・手形の振り出しも支払いに含まれる
短期前払費用の支払いは、現金だけではなく、小切手・手形の振り出しも含まれます。小切手や手形を振り出し、期末時点で未決済であっても、すでに支払ったものとみなすことが可能です。

小切手・手形を振り出すと、原則として取り消すことができず、単なる未払金とは性質が異なると考えられるからです。 

2017年3月24日金曜日

<相続を放棄した人がいる場合の基礎控除の計算は?> 

今回は、相続を放棄した相続人がいる場合の基礎控除額の計算がどうなるかを考えて見ます。

配偶者(A)がいて、子供2人(BC)がいる場合であれば、法定相続人の数は3人となるので、基礎控除額の計算は以下のようになります。

3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

この場合において、配偶者Aと子供Bが相続を放棄した場合はどうなるでしょうか?

3人のうちAB2人が相続を放棄しているので、一見法定相続人の数はC1人だと思ってしまうかも知れません。

しかし、この場合の法定相続人はABC3人ですので、基礎控除額の計算は以下のようになります。

3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円

つまり、法定相続人の数は、相続を放棄した人がいたとしても、その放棄がなかったものとして計算するのです。

2017年3月17日金曜日

<相続税の基礎控除額の基礎となる法定相続人の数> 


2015年の1月から相続税の基礎控除額は、
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数 となりました。
具体的には、配偶者(A)がいて、子供が2人(BC)がいる場合であれば、法定相続人の数は3人となるので、基礎控除額の計算は以下のようになります。
3,000万円 + 600万円 × 3人 = 4,800万円
では、2人の子供のうちBが既に亡くなっており、その亡くなったB3人の子供(DEF)がいる場合はどうなるでしょうか?
Bが亡くなる前の基礎控除額が4,800万円なので、この場合の基礎控除額も4,800万円だと思ってしまうかも知れません。
しかし、この場合の法定相続人の数はACDEF5人ですので、基礎控除額の計算は以下のようになります。
3,000万円 + 600万円 × 5人 = 6,000万円
少し難しいですが、法定相続人の数が何人かという基準で考えることが重要です。



2017年3月7日火曜日

<配偶者控除が改正されます> 


2018年から配偶者控除及び配偶者特別控除が大きく改正されます。

これまで、配偶者の年収が103万円以下である場合は、夫の所得税の計算上38万円の配偶者所得控除があり、配偶者の年収が103万円超141万円以下については、段階的に減少していく配偶者特別控除がありました。

この改正で、103万円以下であった配偶者控除が150万円以下に拡大され、103万円超141万円以下であった配偶者特別控除が150万円超201万円以下に拡大されます。

それと同時に、夫の給与収入が1,120万円以下の場合には38万円の控除を受けることが出来ますが、1,120万円を超えると控除は段階的に縮小され、1,220万円を超えると控除を受けることが出来なくなります。

これらによって、所得税の負担が減少する人が約300万人、増加する人が約100万人と言われています。

2017年2月24日金曜日

<What’s New 預貯金の遺産分割> 


20161219日に今後の相続に影響を及ぼす最高裁大法廷の決定がありました。

これまで、預貯金については、法定相続分に従って自動的に按分されるとされていました。

父が亡くなり、相続人は長男と次男であった場合で考えます。

父が亡くなった時の預貯金が3,000万円であれば、生前の預貯金の贈与に関係なく、法定相続分通り自動的に按分するので、長男1,500万円、次男1,500万円という按分でした。

しかし、今回の最高裁の決定で、生前の預貯金の贈与の取扱いが変更され、生前贈与された預貯金についても按分の際に考慮されることになりました。

これに基づいて、父が亡くなった時の預貯金が3,000万円、生前に長男に1,000万円の預貯金を贈与していた場合を考えます。

遺産総額は、

3,000万円 + 1,000万円 = 4,000万円 と考えます。

よって、長男の取り分は、

4,000万円 × 1/2  = 2,000万円

これから生前贈与1,000万円を引くので、

2,000万円 - 1,000万円 = 1,000万円

この1,000万円が相続時の長男の取り分になります。

一方の次男は、

4,000万円 × 1/2  = 2,000万円

次男は生前贈与を受けていないので、この2,000万円が相続時の取り分になります。

つまり、生前に預貯金の贈与を受けた相続人がいる場合には、その預貯金の贈与についても考慮して預貯金の按分をする必要があるというのが今回の最高裁の決定の主旨です。

2017年2月13日月曜日

<相続税にも障害者控除があります> 

相続税では、相続人のなかに障害者がいる場合には、障害者控除があります。

障害者控除は以下の算式によって計算します。

一般障害者の場合  (85歳  相続開始時の年齢) × 10万円

特別障害者の場合  (85歳  相続開始時の年齢) × 20万円

例えば、相続開始時の年齢が20歳の特別障害者の障害者控除額の計算は、以下のようになります。

85歳 – 20歳) × 20万円 = 1,300万円

この場合の注意点としては、障害者控除額でその障害者の相続税額から引ききれない控除額がある場合には、その引ききれない控除額を、その障害者を扶養する人の相続税額から引くことが出来るという点です。

具体的には、障害者の相続税が500万円で障害者控除額が1,300万円であった場合には、障害者の相続税は、0円となり、障害者控除のうち引ききれなかった800万円は、その障害者を扶養する人の相続税額から引くことが出来ます。

2017年2月1日水曜日

<年金受給者の死亡後に支払われる年金は誰のもの?> 

厚生年金や国民年金は2ヶ月に一度、後払いで偶数月の15日に支給されます。例えば、2月分と3月分は415日に、4月分と5月分は615日に支払われることになっています。

では、年金受給者が47日に死亡した場合には、どうなるでしょうか?

2月分と3月分が415日に支給されることが前提ですが、その段階でその年金受給者は存在しません。ですから、遺族がその未支給年金を請求することになります。

ちなみに、47日に死亡していたとしても、4月分も全額請求出来ます。

この2月、3月、4月分の未支給年金は相続税の対象になるでしょうか?

未支給年金の取扱いについては、平成7117日に最高裁判決が出ております。

この判決によると、「未支給年金は遺族の生活保障を目的とした立場から、死亡した受給権者の相続税の課税対象とはならず、遺族の固有の権利として請求出来る」とされております。

また、所得税法基本通達34-2では、「死亡した者に係る公的年金等で、その死亡後に支給期の到来するものは、その支払を受ける遺族の一時所得に該当する」とされております。

一時所得は、(総収入金額 - 支出した金額 – 50万円) × 1/2  と計算するので、他の一時所得がなければ50万円以下の年金については課税ないことになります。